表1

 アルバムの顔となる部分、プラケースの表側に差し込まれる印刷物が本日THROAT RECORDSに納品。一般的にCDプラケースの場合はジャケットが歌詞カードを兼ねており冊子になっているものが多い。今回のアルバムでは歌詞ブックレットのあるべき場所の定石を外しジャケット部分はトレーシングペーパーに画像を印刷した一枚の紙のみを入れ込む少し変則的な仕様。歌詞カードの束は少し強引ではあるがトレイの裏側に格納。

こうすると盤面の部分が透けて見える。ケース自体も今回は全て透明のものを選んだので裏側まで透けて見えて、CDの存在感が割増される。パッと見の印象もスッキリして良かった。印刷の色味が紙の質感のせいか思っていたより少し濃く出てしまったので、盤面と重なった時どうなるかが少し心配。

あとはタイトル部分のシール素材と主役のコンパクトディスクが届けばそれらを組み合わせて完成。あと少し。今の所とてもいい感じ。

 

ユアナンバーカード

アルバムのプラケースに貼り付けるシール素材が納品されたので、ナンバリングマシンで番号を打つ。目標はデカい方がいいと思うので、3000番まで打つ。

自分が買ったものに番号が振ってあったら、それを見た人はどう思うだろう。

一つしかないものを手に入れた特別感を得られるかもしれないし、数字という割り切ったタグ付けにガッカリする人もいるかもしれない。手に取ったCDの番号で、同じようにそれを手に取った人がその時点でどのくらい存在するのかが確認され、ツアーが進んで行くに連れてその数字が増えていくのは(増えていかないのは)、生々しく残酷でもある。

開かれた世界にある音楽の再生回数と閉じられた世界にあるラベルのナンバリング、何が違うというのか。ツアーが全部終わったら何かわかるかもしれないな。

 

 

自転車操業

レコーディングとCDのプレス、その他諸々の支払いが立て込んでいてツアーが始まる前に力尽きそうなので、ツアー応援グッズ的なものを作って販売していくことにした。大量に作るとそれはそれで先にお金がかかるので、少量生産で売り切って回していこうと思う。世間で自転車操業と呼ばれているアレである。サポートしていただけるとありがたい。

THROAT RECORDS ONLINE SHOP

 

売り切れていた過去作品のCDも数種類、再プレスの手配をして入荷したので未聴の方はそちらもあわせて是非。大手レーベルからリリースされていた過去作品の方も現在少しずつ再発出来るかどうか確認・交渉中。

 

今日はアルバムに封入される歌詞カードとそのケースの最終確認。結局サイズや質感を何パターンか試してみて、B6サイズの歌詞カードの束が一番綺麗に収まったものが某100円均一ショップでしか取り扱いがないことがわかり、100円均一ショップを回って大量に集めるわけにもいかないので、販売元に電話で問い合わせてCDの初回プレス枚数分と同じ数のケースを問屋から卸してもらうことになった。封入時に無駄なスペースの出来る一般的なOPP袋でも別にいいのだが、ここまできたら意地でも完璧なものにしたい。魂、愛、ユーモア、怒り、焦燥、情熱、そして狂気。全てパッケージして世に送り出すつもりで。

このために作られたのかと錯覚する、シンデレラフィットというやつ

ザ・プレイリスト

仕事の合間にNetflixで"ザ・プレイリスト"というSpotifyのCEOダニエル・エクの半生を題材に作られたフィクションドラマを観ていた。一応フィクションてことになっているが、大体こんな感じでSpotifyが出来上がっていったのかなという内容。起業に関わった何人かの関係者の視点から各話が展開し、飽きずに最後まで観ることが出来た。興味のあるテーマでなかったらそんなに面白いものではないのかもしれない。興味がある人は”音楽が未来を連れてくる(榎本幹朗著)”や”誰が音楽をタダにした?(スティーヴン・ウィット著)”とか併せて読んでもいいと思う、面白い本だったので。

2000年代初頭の違法音楽サイトと大手レコード会社の対立から始まって、今や誰でも知っているようなサブスクと呼ばれる音楽ストリーミングサービスの時代へ。いち起業家によるサクセスストーリー、それに纏わる苦悩や挫折、葛藤。ドラマに通底する”音楽は誰のものか”という裏テーマは鑑賞者の置かれている立場によって捉え方が変わってきそうだが、自分は音楽を作る側の目線で終始ムカつきながら物語を観ていた。

とどのつまり違法か合法か旧体制か新体制かというシステムの入れ替えや時代の変遷があったとて、搾取構造自体にイノベーションは起きていない。いつまで経っても音楽業界はこんな感じで時代の変化にフィットする仕様に変形し寄生し続けるだけである。自分が残りの人生を終えるまでの間に大規模な変革がこれから起こるとは到底思えない。

国民総インターネットの時代、これだけ繋がりという言葉に免疫が出来た今の世の中であっても、音楽を作って届ける過程で搾取され続ける方を選ばないといけないようなムードというか、そのやり方でないとそれが音楽であると認められない空気のようなものがある。それを搾取と呼ぶか妥当な手数料だと思うかは人による、それでも必要のないセクションが多すぎる、多すぎてわからなくなっていると言えるかもしれない。内容のよくわからない携帯電話の約款や、知らない間に多く支払っていた消費者金融からの借金みたいなものか。とにかくわかりにくくしておいて情報弱者が損をするように仕組まれている。自分の不勉強が災いしているとも言えるし、身から出た錆なのかもしれない。

「LOSTAGEはなぜサブスクに登録しないのか」というようなことをよく聞かれる。俺に聞かれてもなと毎度返答に困るが、どちらかといえば「なぜ登録するのか」を考えた方がいい。別にLOSTAGEが特別な何かをやっているわけではない、むしろやっていないのだから。皆が使っている理由、というものがあるはずで、それが自分達には当てはまらないから使わないというだけのことである。

楽曲登録者がそれを使う理由とは何か。

・CDが売れなくなったから

・より多くの人々に聴いてもらえる機会

・海外での展開

理由って大体こんな感じだろうか。CDは過去のリリースとそう変化なく売れているし、より多くの人に聴いてもらいたいという野心もあまりなく、海外での展開も考えていない人には特に必要のない仕組みである。

そもそも配信で多く聴かれている人はCDやレコードをリリースしてもそれなりに売れるだろうし、ある程度売れればそこからは音楽活動を続けていれば聴く人もそれに伴って増えていくし、そういう人達は海外での展開もその先の視野に入っていておかしくない。そしてそういう人達は上手くいっているので、特に現状に不満はなく用意されたプラットフォームで利益を最大化するためにそれを利用する。

言いたいことが溜まっているのは、音源も売れず配信の再生回数も伸びず聴いてくれる人の数も増えない人らである。そんな音楽が海外で評価されるということもほとんどなかろう。たまに日本では受けないので海外を視野に入れる、とか言っている人がいるがそれで上手くいくことはごく稀にしかない。一握りの特殊なサンプルを取り出して自分もそれを目指す、というのは別に悪いことではないがそれが皆に出来るのであれば誰も苦労しない。それが出来るやつは国内ベースでもそれなりにうまくやっている、と思うのだ。

自分の手を使って自分の作った音楽を聴き手に届けることが出来ない、という諦めのような気持ちが最初にあるのではないか。仕方なくフェアでないルールに従っている。誰も自ら進んで搾取構造の中に飛び込んで、それを駆動させる歯車になろうと思っていなかったはずである。

先にも言ったが国民総インターネットの時代、これだけ繋がりという言葉に免疫が出来た今の世の中である。素晴らしい音楽さえ作っていれば、それはどれだけ隠してもすぐに誰かに見つかるようになっている。世の中には誰も知らない良い音楽を日夜ディグし続ける中毒者達がたくさんいる。良い音楽は隠す方が難しい。コンテンツとして消費することに慣れ過ぎてしまい、音楽はそれ自体が優れたメディアであるということを忘れてはいないか。余計なことはあまり考えず、まずはそれさえ作ればいい。音楽は誰のものか。俺のもので、俺たちのもので、あなたのものである。それが素晴らしい音楽であれば、必ずここからそこへ辿り着くように出来ている。

諦めてはいけない。

 

 

 

 

担当のSさん

THROAT RECORDSでレコードやCDを包装する袋などの備品類を取引している業者にLOSTAGEのアルバムのパッケージ素材をまとめて注文。こういう時レコード屋だと大口の注文がスムーズでいい。レコード屋やっててよかった。

取引先へは電話で注文、その後FAXで見積もりが送られてくるので、銀行振込を手配してその後発送、数日中に商品が店に納品される。ネット全盛の今、オールドスクールなやり取りではあるが仕事をしている感が割増されているようで、気に入っている。

 

担当Sさん「お電話ありがとうございます、〇〇です。」

五味「注文をお願いしたいのですが。」

担当Sさん「いつもありがとうございます。」

五味「CD用のプラケース、トレイ付きのものを5ケース1000枚分お願いします。奈良のTHROAT RECORDSの五味なんですが。」

担当Sさん「あ、LOSTAGEの?」

五味「そうですそうです。」

担当Sさん「久しぶりのご注文ですよね?ありがとうございます。」

五味「そうなんですよ、前回結構多めにまとめて発注させてもらったんで。今回のはLOSTAGEのアルバムのパッケージに使わせてもらうのにまとめてケースが必要になりまして、、。」

担当Sさん「あ、やっぱり。今作っておられる。Twitter拝見してます、今回はアセンブリご自分でやられるんですか。」

五味「そうなんですよ、なので1000枚分また売り切ったら追加でオーダーもお願いすることになると思います。」

担当Sさん「個人的にも注目してます、頑張ってください。見積もりこれから出してまたFAXさせていただきますので。引き続きよろしくお願いいたします、この度はご注文ありがとうございました。」

五味「ありがとうございます、よろしくお願いします〜。」

 

 

ざっくりこんな感じのやりとりがあった。いつもの電話対応の方と別の方だったが、こうやって気にしてもらっていると嬉しいような、こそばゆいような。アルバムを頑張って売れば〇〇のSさんも喜んでくれるに違いない。人とのやり取りの手間はこうやって報われていくのだろうか。ネットオーダーも便利で良いが、これはこれでまた良いものである。

 

ケースに貼り付ける用のラベルに打つナンバリングのスタンプが届いたので試し打ち。

打つたびに「ガチャッ」ってなるのが気持ち良い。(ラベルは仮出力したもの)

封入される歌詞カードをまとめる袋をOPPにするか不織布にするかの試作、不織布の小袋は柔らかく優しい感じがしていいが今回のジュエルケース一式にはちょっと合わないかもしれない。トレーディングカードなどを保管するケースがいい感じだったので、それで再試作。

印刷業者に発注していた歌詞カード全7種類のうち3種類が到着。納期にバラ付きがあるのは7種類全て紙の素材が違うため。手で触った時にわかるようにしてある。来月3日にはアセンブリ一式揃う予定なので、そこに向けて少しずつ準備。

休日

アルバムのデータ入稿手配の予備日として念のため店を休みにしていたが、昨日のうちに無事に全て終わったので今日は何もない休日になった。

 

家でゆっくりしようと思ったが結局CDのパッケージ素材に使えそうな物を買いに行ったり、デザインを詰め直したりしていた。休みで家にいるのに家族の話も聞かず、自分のペースで作業していたら雰囲気が悪くなってしまい、黙って家を出た。家出である。

 

行く宛もないので車に乗って出来上がったばかりのアルバムを聴きながらドライブをしている。あらためて聴いてみて良いアルバムだと思うが、一体俺は何をやっているのだろう。馬鹿過ぎてつらい。

 

コンビニの駐車場に車を停めて日記を更新。

THC-014

LOSTAGE 12th ALBUM

"PILGRIM"

THC - 014

FORMAT : CD

 

本日無事にマスタリングまでの全行程を終えてCDプレス業者にデータ入稿。ジャケット素材も発注済みなので、あとは届いたパーツの組み立て。全ての納期が順調にいけばツアーには間に合いそう。ひとまず安心。

 

 

今日と明日は入稿と何かあった時の事後対応のために店は休み。ひと段落したので少し前に買っていたDVDで映画を見ていた。子供の頃、深夜にたまたま観たトラウマ映画。

 

THEY LIVE

WE SLEEP