メルカリに出品されているアルバムの話など

5月末から始まった全国47都道府県ツアー"LOSTAGE the TOUR"はまだ埼玉・長野・東京(吉祥寺)・神奈川・岐阜の5ヶ所が終わったところで、ここからまだ45ヶ所45本(42都道府県)のライブが残っている。

要はまだ序盤もいいとこで始まったばかりという訳だが、早速会場と奈良の店舗限定で販売しているアルバムが定価よりも高額でメルカリに出品されていた。

ツアーとアルバム発売のアナウンス前から転売問題の有無とその対策についてはメンバーやスタッフの間で話題に上がっていたが、今時世の中で起こっている希少性の高い商品の高額転売問題への対策はどんな企業でも手を焼いているように思え、我々のような小規模な活動の中でそのようなことにエネルギーを使うのは不毛であるという判断があり、そうなったらそうなった時に考えようという話になっていた。

そして実際に、おそらくライブ会場で購入されていったアルバムがネット経由で定価よりも高額で転売されるという事態が思っていたよりも早く訪れた。何事も起こらなければそれに越したことはないので、覚悟というか心の準備はしていたもののそれなりにショックではある。

今、何をやるべきかということをしばらく考えていたが、これといったアイデアは思い浮かばないし、やはり元々思っていたように今起こっていること(ネットで高額転売する人がいることや、それを購入する人がいることなど)に対して行動を起こすことには食指が動かない。

それぞれの立場から物事を考えてみる、人の気持ちを想像し整理してみることにしよう。

出品者はおそらくライブ会場でCDを定価の2600円で購入し(各人が何枚購入したかは知る術がなく、もしかしたらライブには参加せず物販だけ購入しに来場していた可能性もある)家に帰ってCDからデータだけを取り出してPCのハードディスクに保存し、入れ物としてのCDは不要になったのでネットで不用品として販売する。メルカリやヤフオクなどに出品する際は誰でもそうだと思うが、過去に取引された履歴を確認し販売価格の相場を調べるだろう。相場に対して高く設定するか安く設定するかは人によると思うが、大体の人がそれを基準に値段を決めていると思う。

購入者はライブ会場や奈良の店舗で定価で購入することが出来ない何かしらの理由があり(それに関しては全ての立場の購入希望者の気持ちを掬い上げることは不可能であるという前提で話すが)定価よりも高い値段であっても自分の可処分所得の中からLOSTAGEの新しいアルバムに対して支払ってもいいと思う金額を支払って購入している。

もしかしたら購入する時点で定価よりも高く売るという転売目的があり、ただ単純に金を増やすという動機で右から左へ商品を動かしているだけの輩もいるかもしれない。

こちらが設定した定価よりそれが高くても安くても、そんなことは個人での売買には関係のない話であり、出品者にとっては購入時よりも高く売れて儲かるならそれに越したことはないし、購入者にとってはそれが幾らでも自分が納得のいく金額であって音源データが再生されればそれでいいと思っている。高く買う奴がいるから販売価格が高く設定され、需要と供給のバランスがその繰り返されるやり取りの中で調整されて相場が決まっていくわけだ。

今、発売されたばかりのアルバムがネットで定価より高く売れるのはそれがライブ会場や奈良の店舗限定で販売されているという付加価値・希少価値に依るところであり、制作者がその販売方法に至った経緯というものがあったとしても、そんなことは関係のない市場というか世界がある。それが純粋に商品としてしか存在し得ない、金銭でのやり取りが全ての世界と、そうではない何かを密なやり取りの中で届けようとする者達の世界が交わることはなく、ここでの問いかけやコミュニケーションも意味をなさないように思う。平行線というか、要はもう諦めているということだ。

ただこのまま泣き寝入りするのも癪である。諦め切り捨てられた部分がある以上、では自分が何を諦めないのかを伝える必要がある。

わからない人にはわからなくて結構、というような短絡な話ではない。このブログをここまで読んでくれるような人達にはわかってもらえるはずだと信じて書くが、音楽はそれ自体に評価や価値があり、そしてそれと同じかそれ以上に何時・何処で・誰と・どうやって聴いたかがその音楽に及ぼす影響、始まる前と終わった後も含めた音楽体験の価値というものがある。我々が全国47都道府県を隈なくツアーで周り、届けようとしているものが〜円になりますと簡単に切り分けられるわけがなかろう。定価は言い訳でしかない、或いは約束や保険と言ってもいいかもしれない。

ここまで書いて言っていることがわからない人達とは残念だがさよならさせてもらおう。話している時間がないし、無駄なエネルギーも使いたくない。そして同じ目線で話し、同じ音楽を共有できる人達との関係を強化していくことに時間と労力を費やしていきたいと思う。

このアルバムを幾らで売り買いしようとも私的利用の範囲内であればそれは自由だが、もし定価以上の価格で今後購入するかもしれない可能性のある人達には大事なことを伝えたい。このアルバムにはその聴き方では聴こえない音楽が収録されている。

ツアーや販売方法も含めた音楽体験としての”LOSTAG the TOUR”とアルバム”PILGRIM”がそこに込められた音楽+αの純度と熱量を保ったまま皆さんの元に届くことを願っている。