編集の提案 / 津野梅太郎 宮田文久=編

仕事柄あまり名刺交換の機会はないが、たまにいただいた名刺をみると肩書きに"編集"と書かれている人がいる。作家でもライターでも文筆家でもない、編集という仕事。それは一体何をやる人なのだろうと、少し不思議に思っていた。

出版界の重要人物、津野梅太郎氏が1977年〜2001年までの間に携わってきた編集の仕事に纏わる編集論集。なんと魅力的な仕事なんだろう、カッコいい仕事だ。

高校生の頃、同じ学年にDJをやっている奴がいてバンドしか知らなかった自分は彼のことが何かものすごくカッコよく見えた。所有する大量のレコードからセンスで選んだ音楽を繋いでいくDJの所作、並べられたターンテーブルの上に置かれた見たこともないレコード、首を傾げ斜めに装着されたヘッドホン、なんだかよくわからないが全部カッコよく見えた。あの感じに近い。そういえばDJと編集の仕事はよく似ている。

膨大な知のアーカイブから選び抜かれた言葉や文章を繋ぎ合わせて今までにない切り口で新しいものを作っていく。進化するテクノロジーを取り入れ発展していく業界の現場や歴史の話、デジタルとアナログの未来、作家やデザイナーとの関わり方。なんでもかんでも自分の立場に置き換えて考えるのもどうかと思うが、音楽業界の在り方とも呼応するものづくりのガイドブック。人に何かを伝える/届けることを仕事にしている人には特に響く本だと思う。

俺もカッコいい仕事がしたい。