18/12/24 瞬きをする間に

久々の更新。おそらくもうバレてるかと思うけど、告知事とかがないと日記の更新もやらなくなってきている。想像の通り、今日はその告知というかお知らせである。


先日、姫路のbachoと来年一緒にリリースする(2月頃予定)スプリット音源の録音を奈良でやっていた時に、実はスプリット収録曲以外にもう1曲録音していた。
歌入れやミックス作業と同時進行で映像の撮影も進めていたものが、ついさっき完成。本日公開である。クリスマスプレゼントとか、そんな気の利いた事をやるようなバンドでもないよなと思いつつ、せっかくなのでタイミングを合わせ今夜公開にすることにした。年末のこの時期、街中が浮かれた感じになってるのは、嫌いじゃない。「メリークリスマス」はもはや本来の意味とかどうでもよくなってしまった季節の挨拶みたいなもんだが、口に出して言うと少しバカになれる気がする。そんなことでバカになれるのは幸せなことだろう。


この曲のことを話そう。


昨年6月にリリースしたアルバム[In Dreams]の販売方法が、このご時世LOSTAGEのライブ会場と自分の店THROAT RECORDの店頭にオンラインショップのみでの取り扱い、というので少し話題になった。ありがたいことにそれを受けてCDは沢山売れたし、発売から1年半経った今も会場や店でジワジワと売れ続けている。
http://throatrecords.ocnk.net/product/94
話題作りのための販売方法という側面ももちろんあった。数字の結果だけ見ればアルバム販売枚数もライブでの集客数にしてもそうだが大成功だったと言っていいだろう。ただそれよりも自分が重きを置いていた、気にし続けていたのは、音楽を伝えるとか売るとかいうことをこれからどうやって続けていくかの試金石としての側面である。世間が配信だサブスクだと騒いでいる中で、自分はこれからそのやり方を違和感なく受け入れることが出来るのか、それとも何か別の方法を見つけて自分のものにすることが出来るのか。昨年のアルバムリリース以降、1枚1枚アルバムを直接それを必要とする人達に販売しながらそんなことばかり考えていた。


結論から言うと、作った音楽をこれからどうやって届けていくかについては何も定まっていないし、わからない。
わからない上に時代がどんどん変化していくものだから、この上なく厄介な問題である。誰に聞いても正解はなし、トライアンドエラーの繰り返しだ。そんなことばかり考えている自分が嫌になってくることもあるし、ただ仲間と楽しく音楽をやりたかっただけなのになという気持ちは今もずっとある。だからといって放っておいていいわけもなく、毎日途方に暮れているというわけだ。

それでも同じような立場の人達と対談したりお客さん達の話を聞いたりしていると、皆迷いながら確かめながらこれからの音楽のことを真剣に誠実に考えていることが伝わってくる。出口の見えない迷路の中を皆で探検しているような気分だ。これから先どうなるかわからなくても、希望が消えてしまったわけではない。むしろ余計なものが淘汰され、可能性だけが残ったようにも思える。根拠のないワクワク感。

今まではCD、レコード、定額配信に配信販売、あらゆるメディアを駆使して聴き手が選ぶ時に好きなメディアを選べるように用意しておくのが良いのだと思っていた。聴きたいと思った時に聴ける環境が用意されていることがベターとされる雰囲気というのがあった。作り手も聴き手も迷いながら音楽と関わっているので、とりあえず今やれることを全部やる。それはそれでいい、誰だって便利で手軽な方がいいのだから。でもそうじゃないもっと限定的な伝え方というのがあってもいいのではないかという問いもあった、去年のアルバムリリース以降の話だ。誰もが不確定で曖昧な音楽と迷いながら関わっている以上、作り手がリスクと責任を負って勝手を通してもいいことがあるのではないか。

まずそこに音楽があり、それを伝えるため届けるための方法や仕組みが時代と共に変化してきた。レコードにCD、その他の色々、物質的な入れ物の形が移り変わって今やもう入れ物は不要とされる時代になったが、元々あった音楽自体のあり方は何も変わっていない。入れ物を売って食い扶持にしてきた人達は困るかもしれないが、そういう時代である。



LOSTAGEの新曲、今回1曲だけではあるがYouTubeにミュージックビデオを公開することにした。[瞬きをする間に]という曲タイトルで、我ながらいい曲が出来たと思う。メンバーも気に入っている、と思う。多分。説明は蛇足になるかもしれないが、この曲は今後CDやレコードに収録し販売されたり、配信販売やApple Music、Spotifyといった所謂サブスクリプションサービスに楽曲を登録するというようなことも一切やらないことにした。要するに、ただYouTubeのみで公開され続ける(YouTubeがなくならない限り)だけである。一般的にはアルバムなどが発売される前後にそのプロモーションとしてMVが公開されるという型があり、その使い古されたやり方から一度離れて考えてみてはどうかというわけだ。YouTubeからの広告収入なども無いので、今回のやり方に関して言えば売らない曲ということになる。裏返せば、買えない曲といってもいい。金は1円も生まず、再生されるとその分再生回数のカウンターの数字が増えていくだけである。
CDやレコードといったメディアが音楽を届けるための入れ物だったのと同じようにYouTubeを入れ物として使ってみようと思った。で、その後どうすんの?と聞かれても、どうもしないとしか答えようがなく、ただ作って公開しただけの目的の無い曲である。前作の反動で動いた部分というのもおそらくあるだろう。これを視聴した人達のリアクションで自分の考え方に何らか影響があるかもしれないし、無いかもしれない。ライブの動員や旧譜の動きに繋がるかもしれないし、何も起こらないかもしれないし、それもわからない。長い目でみればバンドや地元奈良を知ってもらうためのコマーシャルなものとしての公開意義はあるように思うが、正直それにはそんなに期待していない。

やはり今も出口の見えない迷路の中にいるが、ワクワクはしている。それでいいんじゃないかなと思えるくらいには、今のところ健全に音楽活動を続けている。


映像はほぼ全編我々LOSTAGEの地元奈良にて撮影。撮影・監督は[NEVERLAND][楽園][BLUE][Flowers/路傍の花]などのMVでもお世話になったMINORxU君が東京から。録音とミックスの方は最近のLOSTAGE作品やライブの音響など、4人目のメンバー的な立ち位置で行動を共にしてくれているKCこと岩谷啓士郎。今回YouTubeのみでの楽曲公開というのもあり、せっかく良い音で録音されたものをわざわざ圧縮した音源で公開することになってしまって、色々と厄介な手間をかけてしまった。我々LOSTAGEの信頼のおけるチーム、少数精鋭である。最近は皆大きな仕事もやってたりするけど、昔から馴染みの友人達と一緒に作ったような、暮らしと音楽の距離が近い映像作品になったと思う。MINORxU君とKC君、他その時たまたまその場に居合わせて撮影に協力してくれた皆、いつもありがとう。

音楽を作って、それをどうやって届けるか。そのプロセスは今までも大事にしてきたし、これからも変わることのない気持ちだ。最良のバランスで続けていくために必要なものは何か、逆に要らないものは何なのかも引き続き試行錯誤しながらやっていく。


ここにしかないもの、自分が1番大事にしている価値観。その方法がたまたま今回はYouTubeで、もしかしたらここからしか聴こえない音楽があるんじゃないかと淡い期待を抱くのだ。どこにでもあるが、ここにしかないもの。長い間、窮屈な入れ物の中に閉じ込められてきた、それが解放された時に聴こえる音楽をいつか聴いてみたい。音楽は音楽であり続け、それに比べれば俺達の一生はあまりに短い。それでもその一瞬で、もしかしたら何かを変えられるかもしれない。


瞬きをする間に。