LOSTAGE 12th ALBUM "PILGRIM"リリースに関して - LOSTAGE / THROAT RECORDS 五味岳久の日記

現在ミックス工程に入ったLOSTAGEの新しいアルバム、タイトルは"PILGRIM"になった。意味は各自調べたり検索したりしてくれたらいいと思うが、そもそもこのアルバムを何のために作ったかというところから纏めておこうと思う。

前作アルバム"HARVEST"制作時にそのツアーで全国47都道府県をツアーで回る、というリリースに伴った計画があった。結局リリースのタイミングがコロナウイルス感染の拡大していく時期と重なったため、計画は一旦白紙となる。"HARVEST"に関してはレコ発のツアー自体が無くなったというか、空中分解的に有耶無耶になってしまった体である。その時点でコロナ禍がいつまで続くのかが予測出来なかったわけで、仕方がないと言えばそうであるが、全国47都道府県ツアーの計画はいつか状況が良くなったら仕切り直せばいいと思っていた。

ただ、仕切り直してツアーに出るにしてもリリースから何年も経った"HARVEST"のツアーを再開するというのは、演奏する側としてもそれを受け取る側としてもどうも熱量が足りない。熱いうちに打つことの出来なかった鉄はただの鉄屑になり兼ねないのである。これから何かを始めようというタイミング、中途半端な気持ちのままツアーに出るわけにいかない。

では、どうするか。

1年ほど前からコロナ禍収束に向けての準備として最新作の制作に取り掛かっていた。収束を見越して動いていたというよりは、その時期が来たときにすぐに動けるようにするためである。どうせやるなら誰も聴いたことのない新しい音楽を届けるためにツアーに出た方が格好がいい。

一般的にアルバムリリースのツアーというものは、作品のリリースがあってそれを届ける・販売する・周知するためのツアーということになっている。なので、軸となるアルバムリリースの後にツアーがあり、ツアーの最後に大型キャパの会場で締めくくり、その後次の作品に向けて動き出していく。年単位のルーティンがあって、その間にメディア露出や大型フェス出演なんかのプロモーション活動など（広告宣伝のためだけではないと思うが）があり、ざっくり言えば大きな周期でそれを繰り返している。そうでない人達ももちろんいるが、大多数はそのような流れで作品をリリースしツアーに出ている、と思う。

それ自体は悪いことでもないし、自分たちも先に述べたその流れに沿って活動してきた。なぜそうなっているかというと、それが一番効率が良いとされてきたし、わかりやすいからであろう。音楽を届けるためのメディア変遷があったとて、長い間そのやり方はあまり変わっていないように思う。

昨今主流のDTMのような音楽制作・表現活動がより個々人の近くにある場合はまた話が変わってくると思うが、所謂バンドのような集団で生演奏を繰り返して何かを作り出すアナログなやり方であれば、仕組みが大きく変わることは今後もそうないと思われる。

今年2023年の5月に発売される予定のフルアルバム"PILGRIM"はLOSTAGEとしては通算12作目（ミニアルバム含む、ライブアルバムと各種スプリットやコンピレーション除く）となる。レーベルを独立させてからのリリースやライブ活動に関して言えば、今までのやり方を踏襲することに対して自覚的に疑問を投げかけながら、その都度システムと個人の表現の距離を確認する作業を繰り返してきた。カッコよく言いたいだけだが、要するに納得いくまでトライアンドエラーを繰り返し、自分の信じている音楽やロックバンドの在り方について悩み、迷い、問い続けている。そのスタンスは現在この日記を更新している今も変わっていない。

正直な話、バンド結成23年目で12枚目のアルバムをリリースするにあたって同じことを繰り返すのにもう飽きた、ということはなくもない。メンバーともよく話すが、活動を続けることが最優先というわけではなく、ただ辞め時を通り越してしまっただけという感も否めない。それでもやるのであれば、まずは自分にテコ入れしなければ話が始まらない。

全国47都道府県ツアーに出るという1年単位での具体的な活動目的がまずあり、そのために作品を用意し、それを持って回る。側から見ればその他大勢と同じようなやり方に見えるかもしれないが、動機の順序が入れ替わっている。今回のアルバムはツアーのために用意した、いわば手土産のようなものだ。どこでも手に入る土産などもらっても誰も嬉しくなかろう。

このような理由から、LOSTAGEの新しいアルバム"PILGRIM"は来月5月20日埼玉秩父ladderladderから始まる各地のツアー会場とTHROAT RECORDS店頭・居酒屋kore kara店頭・音楽スタジオE♭店頭のみでの販売。THROAT RECORDSオンラインショップでの取り扱い開始はツアー終了後の2024年6月以降。前作同様、各種サブスクリプションサービスでの配信とフィジカル音源の一般流通は無しとさせてもらうことにした。

不親切な届け方であるということは重々承知の上、今回のリリースに関してはこの届け方で各地ツアーを回らせてもらおうと思う。ひとりでも多くの人に聴いて欲しい・手に取ってもらいたいという気持ちはもちろんあるが、まず誰に何をどうやって届けたいのかを考えて作った結果こうなった。自分達の活動のベースにあった、もっと言えば心の支えであった自分達の居場所としてのライブハウス。何のためのライブハウスで、何のためのバンドで、何のための音楽なのか。コロナ禍の3年間を経て、一からやり直すつもりでこのツアーに臨みたいと思う。