ボタニカル・ライフ 植物生活 / いとうせいこう

下町のカレル・チャペックこと、いとうせいこう氏が1996年10月〜1999年12月の間に書き綴ってきたベランダ植物育成論。途中、浅草に引っ越したり飼っていたメダカが死んだりと植物以外のエピソードも少しは挟みつつ、基本はいとう氏が日々自宅のベランダとリビングを行ったり来たりしながら繰り広げられたボタニカルな論考、独り言、或いは妄想。マニアックで危険な本である、読む人を選ぶ本と言ってもいい。

なんらかの想いを持って植物を育てたことがある人、今育てている人、或いはこれから育てようと思っている人にとってはある種の経典、啓発本、ガイドブックとして末長く読まれるべき名著であることは間違いがない。各自室内用とベランダ用に2冊持っておいてもいいくらいだ。ただ、興味のない人にはもしかしたら何が書いてあるか全く理解出来ないかもしれない、狂人の植物偏愛日記とも読める。

とにかく面白かった。あまりにも面白い本は読み終わるのが寂しすぎて後半の読書ペースがスローになったりするが、最後の方はほとんど1日1章くらいのペースで読んでいた。嗚呼、もうすぐ読み終わってしまうなどと嘆息をもらしていると、Amazon様が次に読むべき関連書籍で続編らしきものを紹介している。即注文した。恐るべしA.I.のアルゴリズム。早速それが手元に届いたので"ボタニカル・ライフ"を一気に読み終える。なんとも言えない自己肯定感の漲る読後の気持ち良さ。流行りのサウナで言うところの「整いました」、あれに近いのではないか。これで何の躊躇いもなく、また新しい鉢植えを買い足すことが出来る。

植物達が一斉に動き出す、この季節にぴったりの一冊だ。